第壱拾壱話 死闘ハイ・エンド・コロシアム会場付近 何かがくると予測しているかのように、6人の人間があたりに佇んでいる。 ヴァン、ロレッタ、レヴァル、アシャー、キャロル、ラムサスの6人だ。 先頭に立ち、目をつぶっていたレヴァルが呟く。 「…南西の方向から、接近する物体2.おそらくは、シュバイツ殿の言っていた奴等だろうな。」 6人の勇士は、容姿は変わっていずとも、その装備は一変していた。 レヴァルは、以前装備していた『ハチェット』ではなく、 『ルインドライバー』と呼ばれる武器に変わっていた。 他にも、ヴァンは『ガイスターストック』、ロレッタは『ホースキラー』。 アシャーは『ブランブルサップ』、キャロルは『ゴア・スパウト』。 ラムサスは『鋼の杖GDX』と呼ばれる武器に変わっていた。 「ハッ!俺達がいれば、どんな奴等だってイチコロさ。」 6人の中の仲裁役であるラムサスが自信ありげな言葉を口にする。 「油断はするな、ラムサス。噂では、奴等は奇妙な術を使うそうだからな。」 このPTの現リーダーであるヴァンが、今の言葉をとがめるような口調で注意する。 「はいはい、わかりましたよっと」 ラムサスのその態度に、少しイラっときたヴァンだったが、心の揺れは剣の斬道の揺れにつながりかねないので、あえて押し殺した。 見張りをしていたレヴァルが、淡々とした口調で告げる。 「気をつけろ…来るぞ」 「さて…このあたりで降りるとしましょうか、黒龍様。」 黒龍スウォームの背中に乗っていたネビスが、あの長い槍を片手に告げる。 「ウム…ネビス、着地時ノ衝撃ニ注意シロ」 黒龍が、少しずつ高度を下げながら下降していく。 そして黒龍の体が地に降り立ち、あたりに地響きを轟かせる。 ――――――――と、その時。 カチ、という音と同時に、濃緑色の煙が辺りに撒き散らされた。 「な…!これはなんだ?」 濃緑の煙があたりに充満し、黒龍とネビスを包み込む。 息が、だんだんときつくなってくる。 「猛毒…ノヨウダゾ。ネビス。」 「何…!」 そう、この濃緑の煙はまぎれもない猛毒… 事前にレヴァルが仕掛けておいた『ポイズントラップ』である。 「ネビスヨ、私ハコノ程度ノ毒ハ何トモナイガ、人間デアルオ前ニハキツイノデハナイノカ?」 そう、黒龍ほどのモンスターには、この程度の毒など歯牙にも止めない。 だが、人間であるネビスは別だ。じきに、体が猛毒に犯されるだろう。 「…心配はいりません、黒龍様。早くここの人間達の血を絞り尽くして、去ればそれで問題は…」 ネビスが黒龍の背中から地に降りた、その瞬間。 ネビスの右足を、地面から牙状の刃が展開し、獣が獲物に噛み付くかのようにネビスの右足首に刃が食い込む。 『ブービートラップ』と言われる、相手を束縛することのできるスキルだ。 「くっ!またトラップか…!」 『ブービートラップ』が発動した瞬間、近くに隠れていたヴァンとロレッタが、濃緑の中からネビスを挟み込むようにして突撃する。 「人間風情ガ!癪ナ真似ヲ!」 黒龍がネビスを守ろうと、その爪を、尾を振るおうとする。 だが、下手に振るえば、ネビスに当たってしまう危険性がある。 そのことを考慮したのか、黒龍の動きが若干躊躇していた。 振るわれた爪と尾は、ヴァンとロレッタにあたることなく、空を斬った。 『ガイスターストック』と『ホースキラー』の刃が、交錯するようにネビスに突き刺さる。 もちろん相打ちにならないように、だ。 「…まず一人。」 ヴァンが呟き、静かに2人は武器を体から引き抜く。 その様子を確認した黒龍が、怒りを込めた口調で叫ぶ 「ネビス!…オノレ、ヤリオッタナ!!」 黒龍が、その怒りをぶつけるかのように、2人に爪を振るった。 ヴァンが、ロレッタをかばうようにして『ガイスターストック』を盾代わりに構え、踊り出た。 すさまじい衝撃と火花が飛び散り、2人はかなりの距離を吹き飛ばされた。 龍の状態のスウォームの力は人間時の数十倍、まともに食らえば、即死はまぬがれなかっただろう。 体を貫かれたネビスからは、いたるところから血が流れ出ている。 確実に心臓を貫いた。生きているはずはない。 だが… 「…がはっ…」 ネビスが、唾液と血の交じり合った液体を、咳とあわせて吐き出した。 その様子を、驚愕した目で見るヴァン。 「…何…」 ジャンル別一覧
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